『true love』

 

■act.01:『控え室でドキドキ!?』

 夏も本番にさしかかった7月下旬の某日。

 ドラマ撮影をしているまこぴーの陣中見舞いも兼ねて、マナと私、六花は差し入れを持って撮影スタジオに来ていた。

 以前も見学させてもらった都内の某撮影スタジオ。撮影に邪魔になるからやめようと私は反対したのだけれど、結局マ

ナの勢いに押し切られて来ることに。

 まったく、思い立ったら動かなきゃ気が済まないんだから。私が、もっと厳しく止めればいいのかもしれないけれど、マ

ナのそういうところが嫌いじゃないから、どうしても厳しくなれないのよね。

「忙しいのにゴメンね」

「ううん、全然大丈夫。ちょうど休憩に入ったところだったから。それに、マナのお父さんが作ってくれたオムレツの差し入

れすっごく美味しいし。逆にこちらがお礼を言いたいくらい」

 そう言って柔らかく笑むまこぴー。私やマナと同い年なはずなのに、対応が大人びている。芸能界に入ると、こういった

礼儀正しい振る舞いも身に着くものなのだろうか。

「えへへ、それ程でもあるかな〜」

 まこぴーに褒められて、エッヘンと嬉しそうに胸を張るマナ。こらこら、オムレツが美味しいのはあなたの手柄じゃない

でしょ。

「で、今日は何の撮影なの?」

 紙コップに注がれた麦茶を飲み干し、まこぴーの食事がひと段落したところを見計らって私は尋ねた。

「秋に出る新曲のジャケット撮影なの」

「へー」

「ジャケット撮影はもう終わったんだけれど、これから特典で付くミニ写真集の撮影なの。16ページの薄い写真集なんだ

けれど、演出が凝っているから撮影に時間がかかっちゃうみたいで今日は夜まで帰れないみたいなのよ」

 そう言って溜め息をつくまこぴーだったけれど、その表情は言葉とは裏腹にはつらつとしていた。お仕事、楽しくて仕方

ないんだろうな。

「アイドルも大変だね」

「そうね。でも、楽しみながらやれているから平気よ。それに、美味しいオムライスでスタミナもつけられたし、ふたりの顔

も見られたしね」

 そう言ってまこぴーはアイドルスマイルでウインクした。いつも見慣れた同級生のまこぴーではなくアイドル 剣崎真琴の

極上笑顔。もちろん他意などなかったのだろうけれど、あまりにも可愛らしい仕草だったので、目が合った瞬間ドキッとし

てしまった。

 人を魅了する笑顔。ファンの人たちがまこぴーに夢中になるワケがわかる気がした。まさに、人気アイドル剣崎真琴の

面目躍如といったところだろう。

 その後、他愛もない話をどのくらいしていただろうか。今度の休みにみんなで甘味処へ行こうなんて話をしていたら、ド

アをノックして入ってきたマナージャーのDB(未だに慣れないんだけれど、このワーキングウーマン、ダビィなのよね)に

撮影再開を告げられた。

「じゃあ、いくね。今日はありがとう。本当は撮影を見学していってもらいたいんだけど、今回は緘口令が厳しくて、関係

者以外立ち入り禁止なの」

「お気遣いなく。陣中見舞いにかこつけて押しかけてきたのは私たちの方なんだから」

「そんなことないって。ホントに嬉しかった。今日の分は、今度必ず埋め合わせするから、何か考えておいて」

「そんな気を……」

 使わなくていいからと私が言おうとした刹那。

「え、本当? じゃあ、あたし、まこぴーのチュウが欲しい☆」

 マナが瞳をキラキラさせながらとんでもないことを口走った。

「ちっチュウ!?」

「なっ」

「あ、もちろんほっぺにだよ」

 思わず噴出す私とまこぴーに悪戯っぽく笑むマナ。

 本気か冗談かはわからなかったけれど、インパクトは絶大だったようで、言われた本人は苦笑いで表情を固まらせた

まま手を振りつつ部屋を出て行った。

 ゴメン、まこぴー。マナに悪気はなかったんだよ。せめて、このショックが撮影に悪影響を及ぼさないことを陰ながら祈

らせてもらうわね……。

 

act.02へつづく

  

 劇場版ドキドキ!プリキュア『マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』の公開を記念して、ウェディングドレスをテーマに

したお話しを書いてみました(ウェディングドレスが出てくるのはact.02以降になります)。

 前作のあとがきで言っていたような六花×マナのラブラブ話で、六花にこれでもかというほど幸せ一杯夢一杯になって

もらう予定です。

 かなり趣味に走る予定ですので万人受けするとは思っておりませんが、もし趣向の合う方がいらっしゃいましたら最後

までよろしくお願いします。

 ちなみに、act.02までは書きあがっていますので、続きは近日中に。クライマックスになるact.03も年内に発表出来れば

と考えています。

 

 

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